WJ作品中心のSSブログ。
現在はDB(親父中心)、トリコ(コマ総受)となってます。
[1]
[2]
やっと半分終わりました~
【Past】前編、掲載完了です!
本なら1冊なのにブログでは5話にも渡ってしまいました。
次はどうしようかなぁ~
Anecdote(外伝)の親父’sストーリーを載せようか、後編を載せようか。
発行順だと外伝なんですけどね。
まぁ、数日の気分次第という事で。
カテだけ作った【Strain】も捨てがたいんですがね…
※当時(2006年5月発行)の作品を一部改定しております※
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・・・つづきはこちら
「認めん…!」
声の主に皆の視線が集まる。
「オレは絶対に認めん!下級戦士である貴様が戦闘力105,000だと!ふざけるな!」
エリート戦士として、なにより王子としてのプライドが許さなかった。
この星を次ぐ自分ではなく、何故か物事はカカロットを中心に動いてゆく。
本来ならば惑星ベジータのサイヤ人の王子である自分が居る場所にカカロットが居る。
フリーザの信頼を得るのも、サイヤ人一の戦士になるもの自分でならなければならなかった。
宮廷占者がカカロットの生誕祭の折に運命を背負っていると述べたと聞いた時、自分の存在理由を考えたが大きな運命の力を持つ双子星以上の者など居るのとは思えなかった。
親に庇われなければ、あの時に死んでいたであろう赤ん坊が自分の全てを奪っていく。
ならば、奪われたモノは奪い返せば良い。
「オレと全力で戦え!カカロット!」
「イヤだ!」
ブロリーを殴った感触が拳に残っている。
ギニュー達やバーダックを相手にしている時には感じられなかった嫌悪。
今まで、自分の力で相手が死んでしまう可能性など考えた事もなかった。
「オレと戦えと言っているんだ!」
渾身の力を込めたエネルギー弾をカカロット目掛けて打ち放つ。
しかしエネルギー弾はカカロットに命中する事無く、弾き飛ばされていた。
「カカロット…大丈夫?」
戦意をなくし、戦闘力を落としてしまったカカロットが先程のエネルギー弾の直撃を受けていたら、怪我ではすまなかっただろう。しかし、カカロットはかわそうとしなかった。自分は戦わないという意思を貫く為に。
ブロリーは昔、同じような状況があった事を思い出していて。
あの頃のカカロットはかわす事も出来ない状態であったが、ブロリー自身もまた攻撃されているカカロットを助ける事が出来ず、ベジータ王子に攻撃をするのが精一杯であった。
「………今度は僕が守る!」
だが今は違う。
ブロリーの決意を表すかのように、髪の色が深い水底の様な青へと変わった。
尚も止まないベジータ王子のエネルギー弾を時には弾き、時には受け止めカカロットを庇い続ける。
同じ日に生まれ、血の繋がった兄弟の様に育ってきた。
一緒に居ない時間よりも、共に過ごした時間の方が遥かに長い。
その中でブロリーはカカロットの全てを見てきていた。
何も考えていない様で、回りの人達の事を一生懸命考えている姿を。
自分よりも他人を優先する心を。
そして最後の最後にならないと相談してこない意固地な部分を。
カカロットの最後の砦になろうと決めたのはいつの頃だっただろうか。
何が自分を此処まで突き動かすのか、はっきりとは解らない。
解っているのはカカロットの心を守らなければならないと言う事。
たとえ過ちであったとしても人の命を奪ってしまったら、カカロットの心が消えてしまうのではと思えてならない。
「……ヤメロ……」
今までに聞いたことも無い、地に響くような低い声がした。
声の主を見るとその体を金色のオーラが包み、逆立った髪もまた金色へと変化している。
「キサマの相手など俺で十分だ!」
カカロットもこんなブロリーは見た事がなかった。
いつもの温和なブロリーとは全然違うその姿に圧倒されてしまう。
「カカロットと戦うと言うなら、俺がキサマを殺す」
ブロリーはベジータ王子の身勝手な行動に、怒りを抑える事が出来なくなっていた。
自分の何処にこれ程の力があったのか、自分でも判らない。
それでも一つだけ判る事があった。
目の前にいる者こそが敵だ、と。
「死んでしまえ!」
重い一撃がベジータ王子に命中する。
ブロリーの戦闘力は平時の倍以上に跳ね上がっていた。
その攻撃を遮る者は居ない。
フリーザですら、目を見開いたまま動けずにいる。
「や、やめるんだ!ブロリー!」
「邪魔だ!」
誰よりも先にパラガスが止めに入ったが、力の差は歴然としており軽く弾き飛ばされてしまう。
「何をしている!王子を救出せんか!」
投げ飛ばされながらも、エリート戦士達へ指示を出す。
パラガスの言葉で我を取り戻したエリート戦士達だったが、全員で押さえにかかってもブロリーはびくともしない。
「ブロリー!」
カカロットも力の限り、ブロリーの腕を引っ張る。
戦闘力を最大限まで出して引いているにも関わらず、ブロリーの動きは止められず、その手はベジータ王子の頚部を締め上げようとしていた。
「カカロットを…カカロットを傷つける者は消えろ!」
「王子を放せ!ブロリー!」
「このままでは王子が死んでしまうぞ!」
「煩い!」
腕にしがみ付いていたエリート戦士は軽々と振り払われ次々と岩場へ叩きつけられる。
「うわっ!」
短く上げられた悲鳴が自我を失っていたブロリーの耳に残った。
(何を
崩れた岩場に小さな人影が見える。
「カ…カロッ…」
意識を覆いつくしていた霧が徐々に晴れる。
(何をした?)
怒りに奪われていた思考が戻るにつれ、ぼやけていた視界が鮮明になる。
(誰を攻撃した?)
小さな人影が徐々にその姿を現した。
「カカロットォー!」
掴んでいたベジータ王子を放り出し、人影の、カカロットの元へと向かう。
抱き起こしても全く動く気配がない。
今までバーダックの拳を受けた時ですら、意識を失った事は無いというのに。
「カカロット……カカロット!」
「!今の内に王子を!」
幸いにもベジータ王子は意識を保っていた。
その目にブロリーに抱きかかえられたカカロットの姿が映る。
「カカロッ………ッ」
無意識に伸ばしかけた手を握り締める。
自分が望んだ筈だった。邪魔な者が居なくなる事を。
(………違う!)
「オレが………オレは!」
カカロットを殺すつもりだった。
明確な殺意を抱いていた。
だというのに、意識の無いカカロットを前に湧き上がってくるこの苦しみは一体何なのだろうか。
「ベジータ。動けるならばお前は城へ戻れ。ラディッツとターレスは急ぎカカロットを医療棟へ運べ!」
王の命令はラディッツとターレスの耳に届いていたが、直ぐに反応する事は出来なかった。
今までに味わった事の無い畏怖。
戦闘力が高いだけではなく、周囲に撒き散らされる殺意に気圧され、全く身動きが取れなかった。
「医療棟へ運ぶより、私の船をこちらに呼んだ方が早く治療が行えますね」
「お願い致します。ラディッツ!ターレス!何をしている!早くカカロットを
王が見やると、懸命にカカロットの元へ向かおうとしている2人を見えない何かが邪魔していた。
「ブロリー!カカロットを渡すんだ!」
「キサマ等は…手を出すな!」
ブロリーが声を上げると、壁となっていたエネルギー波が2人を襲う。
またブロリーは完全に元のブロリーに戻ってはいなかった。
「チッ……馬鹿野郎!そのままじゃカカが死んじまうぜ!良いのか!」
「カカロットが
(嫌だ!)
頭の中で警鐘が鳴る。
「駄目…だ…カカロットが…死んでしまったら…」
「俺達だってカカに死なれたくねぇんだ!解ったらエネルギーの放出を止めろ!」
エネルギーの放出が収まるにつれ、ブロリーの容姿も元の姿へと戻ってゆく。
「
「誰もお前1人の責任だとは思っちゃいないさ」
そう、ブロリーだけの責任ではない。
彼を止められなかった、そしてカカロットを受け止められなかった自分達にも責任がある。
「ブロリー。泣いてる暇があったらさっさとカカを運びやがれ!フリーザ様の宇宙船が向かって来ちゃいるが、こっちからも動きゃその分早く治療できるからな」
宇宙船の進行方向を確認すると、3人は一斉に飛び立った。
「パラガス…ブロリーは…超サイヤ人なのか?先代が創り上げようとしていた…」
「まさか!私も妻もあの実験には参加しておりません。それに先代の理論ではルートタイプにのみ現れると」
エリート戦士達もざわつき始める。
「ベジータ王、何なのですか?その超サイヤ人というのは。普段のブロリーさんとは全く違う様子でしたが」
「…伝説です。遥か昔よりサイヤ人に伝わる。金色の髪と蒼い瞳を持つサイヤ人が現れ、強大な力を振るったと」
サイヤ人ならば一度は聞かされる物語。
そして子供にとっては憧れの的であり、先代の王が取り付かれた妄執。
「でしたら、喜ぶべき事ではありませんか?最強の戦士が誕生したのでしょう?」
「超サイヤ人は力の象徴であると同時に…破壊の象徴でもあるのです。この星に我々サイヤ人が移住する原因になった母星消滅にも超サイヤ人が関わっていたという文献が残っております」
先程のブロリーを見る限り、その文献も嘘ではないと思えてしまう。
もしカカロットが居なかったとしたら、ブロリーの暴走を止める事が出来たか解らない。
「ともかく…一度私の船に参りましょう。カカロットさんの容態が心配です」
冷静を装いながらも、フリーザは先程のブロリーを思い返していた。
あの程度の戦闘力ならばまだ恐れる事は無いが、同時に発していた己の動きさえ止める凄まじい殺気には目を見張るものがあった。
(伝説の戦士…ですか…)
サイヤ人の力は必要だった。
個々としての能力ならばフリーザの方が上ではあるが、戦いに慣れている戦闘力の高い種族は他には居ない。
それに現在は別の楽しみも存在している。
今、惑星ベジータを滅ぼされる訳にはいかなかった。
(………この鉱石……使えるかも知れませんね………)
フリーザの船に収容されたカカロットはメディカルマシンへと入れられた。
しかし、機械は直ぐに治療完了のサインを示し、薬水が抜かれてしまう。
「……治療不可能です」
「なっ、テメェ!医者だろうが!」
ターレスが若いドクターに詰め寄る。
「怪我らしい怪我が無いんです!ただ眠っているとしか言い様が無いんですよ!」
身体の外部にも内部にも、怪我をした形跡がない。
呼吸・心拍・脳波など調べられる限りの事を調べても異変は何も見つからず、診断結果としては睡眠状態であるとしか結論が付けられない。
「いつ…目を覚ますんですか…?」
「前例が無いので予測がつきません。直ぐに目覚めるのか、長く眠り続けてしまうのか」
「…ごめん…カカロット…ごめん…」
理性を取り戻した後、自分の行った行動は全て記憶に残っていた。
ベジータ王子に行った事、周囲の人々の表情、そして自分を取り戻させてくれたカカロットの存在。
時間が経つに連れ、自分に対する恐れが生まれた。
あの時、カカロットの声に気付けなければ自分はあのまま暴れ続けていたのだろうか。
もう一度あの力が出てきてしまった時、カカロットは傍に居てくれるのだろうか。
カカロットが目覚めなければ、自分はどうなってしまうのだろうか。
考えれば考える程、自分がどれだけカカロットを必要としているのかが解る。
その思いはラディッツとターレスも同じだった。
「カカロット………情けない兄貴でごめんな」
「ほんと、情けねぇよな。このオレ様が動けなかったなんてよ。親父さんになんて言やいいんだ…」
カカロットが生まれてから、家の中はカカロットを中心に動いていた。
あの日、守ると誓った存在。
なのに何も出来なった自分達は今は動かぬ手を握り締める事しか出来ない。
力が欲しかった。
あの恐ろしい力に負けない、大切な存在を守れるだけの力が。
「ラディッツ、ターレス。カカロットの容体は
見るからに気落ちしている3人の様子に、王達は現状を悟った。
医師からの説明が終ると、涙を浮かべたブロリーが近付いてくる。
「父さん………僕は………」
ベジータ王とフリーザはそこで改めて、ブロリーがカカロットと同じ10歳の子供である事を思い出した。
カカロットと一緒にいると体格や話し方のせいで同年齢だという事をつい忘れてしまうが、彼もまた守られるべき子供なのである。
「出来るだけカカロットの傍にいてやれば良い。カカロットが目を覚ました時に直ぐに謝れるように。な」
パラガスが視線を向けると、ラディッツは無言で頷く。
あれは事故だと、ラディッツにも解っている。
ブロリーがカカロットだと認識した状態での行動ならば許す事は出来ない。
だが、カカロットを傷つけたと一番心を痛めているのはブロリーに他ならないのだから。
その日から、カカロットの元気な声が街中に響き渡る事はなかった。
後日帰還したバーダックは、パラガスと共に一切の任務を受けなくなり、カカロットの傍に付き添っている。
逆にラディッツとターレスは休むまもなく遠征に行くようになり、家に戻る事が少なくなった。
ベジータ王子は城中での謹慎処分となり、ブロリーもまたカカロットの傍を離れようとしなかった為、城下町はかつて無い静けさに包まれる事になった。
Past 第4話。
やっと主人公赤ん坊状態脱出~でもチビッ子です(笑)
【一期一会】のチビココも年齢にそぐわないですが、こちらのブロリーも精神的には大人です。
…実は、ブログ式SSで何が苦手ってこの本文欄を書くのが苦手だったりします。
何分、人見知りなもので(笑)
それも連日更新していると何書いたか解らなくなったり。
もしかしたら、そのうち「第○話」程度になっているかも知れません(^_^;)
※当時(2006年5月発行)の作品を一部改定しております※
やっと主人公赤ん坊状態脱出~でもチビッ子です(笑)
【一期一会】のチビココも年齢にそぐわないですが、こちらのブロリーも精神的には大人です。
…実は、ブログ式SSで何が苦手ってこの本文欄を書くのが苦手だったりします。
何分、人見知りなもので(笑)
それも連日更新していると何書いたか解らなくなったり。
もしかしたら、そのうち「第○話」程度になっているかも知れません(^_^;)
※当時(2006年5月発行)の作品を一部改定しております※
・・・つづきはこちら
生誕祭においてフリーザがカカロットのシッポを抜いてしまってから早10年。
未だにカカロットのシッポは生えていなかった。
そんなカカロットの元にはフリーザより毎年誕生祝が届けられ、フリーザ本人も年に数回顔を見せていた。
「やはりカカロットさんの成長が思わしくないのはシッポが無い事が原因なのでしょうか」
王宮で次の遠征先を打ち合わせている最中、フリーザから唐突な質問が飛び込んできた。
「前例がないので何とも申せませんが…それ程お気になさらずとも」
シッポが無くなった本当の原因はフリーザではない。
フリーザと条約を結べると喜んだ反面、いつか何処からか真実が漏れてしまうのではないかとベジータ王は内心ハラハラしていた。
「先日パラガスさんの息子さんと一緒にいらした時は兄と弟と言っても良い程、体格に差が出ていました。それにザーボンさんからの報告によればシッポが無い為にいらぬ陰口を叩かれているとか」
失われたシッポが原因であるとの確証は何も無いが、カカロットの身体的成長は著しく遅れていた。
10年前の生誕祭での出来事はその場にいた者達に堅く口止めした為に、王宮に入れなかった下級戦士達は知らずにいる。その為、シッポの無いカカロットは純粋なサイヤ人では無いのではないか、と囁かれていた。
これにはバーダックに対する妬みも含まれていたのだが、当のバーダックは全く気にする事無く、日々遠征を楽しんでいる。
「本来ならばその様な者達はその場で叩きのめしてしまいたいのですが、私が横から出て波風を立てる訳には参りませんからね。どうしたものかと…」
これ程、カカロットに心を折っているフリーザの目に真実が曝されてしまったら、この星はどうなってしまうのだろうか。
真実を知っているのはベジータ王を除いて6人。
バーダック、パラガス、ラディッツ、ターレス、ブロリーそして医療棟のドクター。
万が一にも口を滑らす可能性があるものは居ないが、それでも心配は尽きる事がない。
「失礼致します!」
扉をノックする音と共に、王宮付きの兵士が入室してきた。
「東方警備隊よりエリート部隊の派兵要請が入っております」
その場が緊張に包まれた。
エリート部隊の派兵。
それは大事が起きていると言うことだ。
大規模な暴動が起こったか、他の惑星からの侵攻が始まったのか。
「派兵理由はなんだ」
「大変申し上げにくいのですが……ベジータ王子とブロリー、カカロットの3名が揉め事を起こしている様です」
「おやおや、カカロットさん達も困ったものですね」
言葉とは裏腹に表情は楽しそうである。
「私が行こう。近衛第一分隊に出兵命令を。パラガスとバーダックも呼び出せ」
「バーダックは東の銀河へ遠征に出てしまいましたが…」
遠征に出たのが4日前。
まだ到着していないであろう事から、緊急連絡を入れたところで最低4日は戻って来れない。
「では私が代わりに同行致しましょう。構いませんね?」
同行の許可を求めている訳ではなく、これは決定事項だった。
この場にバーダックがいたとしても、フリーザは間違いなく着いてきた事だろう。
10年前の一件依頼、フリーザは大層カカロットを可愛がっていたのだから。
「お願い致します」
一行は鉱山の広がる東地区へと向かった。
「いい加減にそれを寄越せ!」
「イヤだったらイヤだ!」
途中で合流したパラガスと共にベジータ王がエリート部隊を伴って現場に到着すると、壮絶な爆音と共に子供たちの声が聞こえた。
ベジータ王子が本気で攻撃を仕掛けている事は、誰の目にも明らかだった。
「何をしている!」
爆音に負けぬベジータ王の声に、3人が動きを止めた。
「何が原因だ」
「カカロットの野郎が分不相応な物を持っていたからオレが有益に使ってやると言っただけだ」
見るとブロリーの後ろに庇われるようにしているカカロットの手の中には大きな石があった。
「鉱石のようですね」
淡い光を放つそれをフリーザは目にした事がない。
「あの石は月光石と呼ばれる大変希少な石です。加工すれば装飾品としての価値もありますが、我々サイヤ人にとっては原石のままでも己の力を増幅する効力がある為、かなりの高額で取引されております。月の光で本来の力を出せる我々に力を与えてくれる光る石。その為、月光石の名がつきました。それにしても…あれ程の大きさは私でも今までに目にした事がありません」
パラガスの説明により先程以上にフリーザは鉱石に興味を抱いた。
増幅器の変わりになるような自然石。
その様なものは数多の星を参加に持つフリーザも聞いたことすらない。
「それで、そちらはどなたが見つけられたのですか?」
「カカロットです。昨日から一緒に探しておりました」
後ろに隠れ俯いてしまっているカカロットに代わり、ブロリーが答える。
「今更、下級戦士のカカロットが鉱石の一つや二つ手にしたところでどうなるものでもない。ならばオレが有効に使った方が国の為にもなるだろう」
ブロリーが睨み付けるがベジータ王子は意に介する様子もない。
カカロットの姿は完全にブロリーの後ろに隠れてしまっており、フリーザ達からも確認する事が出来なかった。
「カカロットさんはその鉱石をどうされるおつもりだったのですか?」
静かにカカロットに近付き、俯いてしまっている顔を下から覗き込む。
「…実はカカロットはフリーザ様に今までのお礼をしたかったんです。ですが、僕達はまだ給金を貰える立場ではありません。鉱石ならば発見者に所有権があるので2人で探しに来ました」
「オラ………ちっせぇまんまだから父ちゃんや兄ちゃん達みてぇになれねぇって。ちっせぇオラが自由に遊んでられんのはフリーザが王様に言ってくれてるからだって皆言ってっから…だから………」
自分に出来る事で礼をしたかった。
でも自分に何が出来るかわからずブロリーに相談し、月光石を探す事にしたのだった。
「ありがとうございます。カカロットさんのお気持ちは大変嬉しいですよ」
「なぁ、フリーザ。怒ってっか?」
カカロットには今のフリーザの言葉に違和感を感じていた。
いつもと同じ優しい言葉なのに、少しだけ怒っているような感じがする。
「いいえ、カカロットさんに怒っているのではありませんよ。ですが、一つだけ約束して下さいますか?これからは噂になど振り回されず、自分の信じたものを信じ続けると」
見ようによっては怖い笑みを浮かべながら、カカロットの頭を撫でる。
フリーザはカカロットの行動が心から嬉しかった。
だが、その反面、カカロットにくだらない噂を聞かせた者達に対して怒りを覚えていたのだ。
「解った!オラもうあいつらの言うことなんて気にしねぇ!そんで父ちゃん達みてぇに強くなってフリーザに力貸せるようになる!」
ほほえましい一連の会話を周囲の大人達は冷や汗を浮かべながら聞いていた。
カカロットが礼儀に疎いのは父親の影響もあるだろうが、先程からフリーザを呼び捨てにしているのである。
フリーザが気にしていないので大丈夫なのだろうが、万が一にも機嫌を損ねたらと思うと気が気ではなかった。
「解って下さいましたか。それではその石は私のお抱え細工師に預けて加工させましょう。このサイズならば私の分だけでなく、カカロットさんやブロリーさん達の分まで作れますよ」
ねぇ、とブロリーに同意を求めてくる。
「ありがとうございます。カカロット、僕も貰っていいかな?」
ブロリーは幼い頃、ザーボンとドドリアに教えられていた。
フリーザのカカロットに対する言葉を否定してはならないと。
各銀河を征服しようとしている《冷酷な悪魔の一族》に生まれたフリーザはカカロットに出会うまで冷酷で残虐なだけの支配者だった。
当初はサイヤ人の戦力を損なわずに手に入れるために結んだ不可侵条約であったが、カカロットに触れる度にフリーザの考え方は軟化し、それに伴って何故か東の銀河統一への速度は上がっていった。
フリーザが純粋な心というものに触れたのはカカロットが初めてだったのだ。
自分を偽らず、自分を騙さず、自分の意思を貫く強い心。
それに触れた事により《優しさ》を覚えたのだが、お気に入りとなったカカロットに関しては甘すぎる所もあり、カカロットに関する事象に対しては以前並みの冷酷な面を見せる事も多くなったのだった。
「じゃあ、もっとあれば父ちゃん達の分も作れっかな!」
「これ一つで十分ですよ。出来上がりましたら直ぐにお持ちしますからね」
カカロットに笑顔が戻り、ブロリーもほっと胸を撫で下ろした。
だがそれも束の間。
続けられたフリーザの言葉により周囲の空気が一瞬にして凍てついた。
「いいですか、カカロットさん。体ならば私も皆さんより小さいでしょう?ですが私はザーボンさんやドドリアさんより遥かに強い力を持っています。体の大きさと強さは別物。貴方が本気を出せば此処の誰よりも強いサイヤ人である事を私は勿論、ザーボンさんもドドリアさんも、それに特戦隊の皆さんも知っていますよ」
聞き捨てならない言葉だった。
戦闘力が既に自分達を超えているベジータ王子やブロリーならば解るが、カカロットの戦闘力は5,000程度。
下級戦士であり、シッポすら生えてこないカカロットがエリート戦士の中でも実力を認められ王の近衛となっている自分達より強いと言う。
「おや、その顔ですと皆さん知らなかった様ですね。カカロットさんは既にギニューさん達と対等に戦えますよ。ブロリーさんが戦闘訓練に参加している間、暇そうにしているという事でしたのでお相手をして上げるようにお願いしておいたのですがね。飲み込みが早いと大変褒めていましたから」
ブロリーが参加している戦闘訓練はエリート戦士でも戦闘力が20,000を超えている者しか参加することが出来ない。
それに参加出来ないカカロットが戦闘力100,000以上と言われているギニュー特戦隊と対等に戦えるわけが無いのだ。
「先程、ベジータさんの攻撃を受けている時も力を抑えてましたね?」
「…ザーボンの兄ちゃんもドドリアのおっちゃんも…ギニュー達も皆と稽古する時以外は本気を出しちゃ駄目だって言った…」
「カカロットさんの力では相手の命を奪ってしまう可能性がありますからね。彼等もそういった事態が起こらないようにと、本気を出しては駄目だと言ったのですよ。ですが、自分の命が危ない時や周りの人を守る時にはその力を多少使った所で問題ないのですよ」
カカロットの能力が普通のサイヤ人のそれと違う事にフリーザは気付いていた。
そして誰はばかる事無く、その能力を伸ばす為に自分の側近であるザーボンとドドリア、そしてギニュー特戦隊をカカロットの元へ通わせていたのである。命を下した当初は面倒だなんだと言っていた特戦隊であったが、数度の訪問で誰が行くかを揉めながら決めるほどの入れ込みようを見せるようになり、フリーザも満足していた。
「馬鹿な!カカロットが反撃できなかったのではなく反撃しなかっただけだとフリーザ様は言われるのですか!」
ベジータ王子は怒りを露にしていた。
「現にカカロットさんは貴方の攻撃を一撃たりとも受けていない事がお解かりになりませんか?」
カカロットとベジータ王子が争えば、たとえブロリーが間に入ったとしてもカカロットが無傷ですむ筈が無い。
それだけの戦闘力の差があるのだ。
「フリーザ様、その事は
「くぉのバカロットォー!!」
ブロリーの言葉を遮った声の主が誰だかを確認する暇も無く、カカロットの頭には拳骨が落とされていた。
「親父さんがいねぇ時に限って問題起こしてんじゃねぇ!親父さんが戻った時に誰が鉄拳制裁受けると思ってんだ!オレだぞ!オレ!人の身にもなって行動しやがれ!」
「タ…ターレス……周り見ろ、周り…」
猛スピードで飛んできたターレスに何とか追いついたラディッツが肩で息をしながら周囲の確認を促す。
バーダックの鉄拳制裁を幼い頃より(主に自分が原因で)身に味わっていたターレスにはカカロット以外はまったく目に入っていなかった。
ぐるりと見回すとベジータ王にパラガス、エリート戦士が数名、ブロリーにベジータ王子。
そして自分の隣を見た時、予想だにしない人物の姿を目にし声が上ずってしまう。
「フ…フリーザ様!?」
「相変わらずですね、ターレスさん。ラディッツさんもご苦労が絶えない様で」
社交辞令ではなく、事実ターレスの苦労は絶える事がなかった。
礼儀を知らず、力で物を言わせ、好奇心に逆らわない為何にでも手を出す父・バーダック。
それに影響を受け、口よりも先に手が出る幼馴染で兄弟同然の同居人・ターレス。
自由奔放、好奇心旺盛、後先考えずに動く弟・カカロット。
カカロットに関してはブロリーが面倒を引き受けてくれる事が多いが、他の2人の皺寄せは全てラディッツに集まっていた。
「…ラディッツ、ターレス。それにブロリー。お前達はカカロットの実力を知っていたのか?」
「は?」
「突然何なんですか、パラガスさん」
フリーザがいる現状ですら把握が出来ていないのに、唐突に話を振られても何の事だがまったく解らない。
「カカロットさんの力が此処にいる方々よりも上だと申し上げたのですが、何方にも信じて頂けないようでしてね」
「そんな事かよ。ありゃ、管理局のヤツが悪いんだぜ?」
「親父が何度申請に行っても門前払いだったんだよな。計測も無しで。オレやターレスが行っても駄目でさ」
「で、終いにゃ『もう止めだ!』っつって親父さんも申請に行く事も止めちまったんだよな」
サイヤ人は戦闘力によりチーム編成が行われている。
その為、戦闘力が上昇した場合は逐一報告に行く決まりになっていた。
「まぁ、ありゃ親父さんが昔虚偽申請したツケが回ってきたんだろうけどな」
成長不良のカカロットの戦闘力が上がったと報告しても却下された理由の一端は確実にバーダックであった。
現王が即位した後、戦闘力による遠征先の選別が行われるようになったのだが、幾ら狂戦士とはいえ、チーム単位での行動が必要とされた。
その為、チーム全体の戦闘力が低ければ赴ける遠征先も制限されてしまう為、チームメンバーの戦闘力を勝手に登録しなおすという荒業を使い、自分の行きたい遠征先を選んでいたのだ。
迷惑をこうむったのはチームメイトである。
中には全てをバーダックに任せて楽をするものもいたが、大半は重傷を負い、死に掛けた者もいた。最も…その後、戦闘力が上がり、恨み言が礼に代わりもしたが。
「ま、信じられねぇかも知んねぇが、今のカカは親父さんと喧嘩しても引けを取らないぜ。この間は親父さんも怪我したしな」
「…あれはお前とブロリーも割って入ったから目安にならないと思うぞ…」
現在のバーダックの戦闘力は150,000。
ブロリーとターレスが居たとは言え、カカロットと3人で手傷を負わせる事は不可能に近い。
「なんにせよ、計測もしねぇで登録を断った管理局の怠慢が原因って事だ」
「待て。今計測してもカカロットの戦闘力は5,000。管理局の怠慢とは言えないであろう」
その場にいる誰のスカウターの数字も変わらず5,000である。
「父さん、カカロットは戦闘力の変動が出来るから、今の数字が正しい数字じゃないんだ」
赤ん坊の頃に見せた現象。
その後、目にする事が無かった為、すっかりと忘れていた。
「僕も正確な数値は知りませんけど…多分今のカカロットは僕より上です」
ブロリーは現在、バーダックに次ぐ戦闘力の持ち主であった。
まだ年齢が達していない為に実戦に出ることが出来ずにいるが、後数年もすればバーダックをも抜けるのではないかとエリート戦士達に期待されている。
とは言え、ブロリー自身はサイヤ人のトップに立つ事など考えている訳も無く、カカロットの傍に居る為だけに大人でも音を上げる訓練に参加しているだけなのだが。
「カカロットさん、折角ですから皆さんに実力を見せて差し上げては如何ですか?」
見せられるものなら見せてみろ、とエリート戦士達は挑発的な視線をカカロットに送る。
ベジータ王子もまた、カカロットを睨み付けていた。
「ほ…本当に良いのか!?なぁ!オラ、本当に本気になって良いんだよな!」
心の底から嬉しそうな瞳でエリート戦士達を見渡すが、エリート戦士達の怒りは臨界へと達していた。
今この場にいるのは王の近衛。平均戦闘力は40,000を超える。
そんな彼等を前に怯えるでもなく、本気を出せると喜んでいるのだ。
「では、始めましょうか。カカロットさん、準備は宜しいですね」
コクン、と頷くとカカロットは一気に気合を入れ始めた。
同時にエリート戦士達の顔色が変わる。
スカウターの数値は凄まじい勢いで上昇し、あっという間に自分達の戦闘力を超えてしまったのだ。
それでもまだ戦闘力の上昇は止まらない。
「ば…馬鹿な!その歳で戦闘力105,000だと!」
ベジータ王もパラガスも、己のスカウターが示す数値が信じられなかった。
ブロリーの80,000でさえ、10歳の子供としては異例の数値である。
カカロットの戦闘力はそれさえ超え、10年前の狂戦士以上の数字を示しているのだ。
「それじゃ、行っくぞー!」
無邪気な声で戦闘態勢をとる。
圧倒的な力を見せ付けられたエリート戦士達は動く事が出来ずにいた。
「!カカロット!」
カカロットの一撃が1人の戦士に振り下ろされる瞬間、ブロリーが間に割って入った。
ブロリーの体に小さなカカロットの拳が減り込む。
「だ…駄目だ…カカロット……これじゃ相手が…」
死んでしまう。
自分より強い者としかやりあった事の無いカカロットは手加減を知らなかった。
カカロットの半分以下しか戦闘力を持たないエリート戦士が受けていたならば、確実にその命を奪っていた事だろう。
「フリーザ様、彼等も貴重な戦力です。この場で己の愚かさも学びました。今後はより良い戦士となる筈です」
痛みを堪えながらもフリーザに訴えるブロリーの横には彼を心配するカカロットの姿があった。
「カカロットさん、ブロリーさんを殴られた時、どのような感じでしたか?」
「…ヤな感じだった…」
「今のカカロットさんは力を極端に抑えるか、全力を出すかしか出来ません。ですがもし、相手の力に合わせる術を学んでいればブロリーさんが間に入る事もなかったでしょう」
同族殺しには厳罰が与えられる事を、フリーザは承知していた。
そして、カカロットが知らずに罪を犯さぬよう、ブロリーが間に入るであろう事も。
「相手によっては力を抑える事も必要なのです。先日、ギニューさんに相談を受けていたのですが、丁度良いタイミングでした。これはカカロットさん自身の身を守る為にも必要な技術です。今後は面倒がらずにギニューさん達の言う事を聞けますね?」
目元に涙を浮かべながら頷くカカロットの姿に、フリーザは満足げな笑みを浮かべた。
DB更新~
この話で「たった一人の最終決戦」に出てきたキャラは全員出た!と思ったら…2名ほど出てませんでした…
台詞の少なかったサイヤ人2名…今後も出なかったかと…(^_^;)
さぁ!気を取り直して、Relation【Past】第3話です!
※当時(2006年5月発行)の作品を一部改定しております※
この話で「たった一人の最終決戦」に出てきたキャラは全員出た!と思ったら…2名ほど出てませんでした…
台詞の少なかったサイヤ人2名…今後も出なかったかと…(^_^;)
さぁ!気を取り直して、Relation【Past】第3話です!
※当時(2006年5月発行)の作品を一部改定しております※
・・・つづきはこちら
後日、カカロットには目立った後遺症も見当たらず、生誕祭は無事に執り行われた。
「親父!絶っっっ対にカカロットの事、離すなよ!」
「んなこたしねぇよ・・・」
失われたカカロットの尻尾はメディカルマシンで再生する事が適わなかった。
その為、近くの星に住む動物の尻尾を拝借し、オムツに内側から縫い付けるという至ってシンプルな方法でこの場を乗り切る事になったのである。
ただし、カカロットが動き回ったり暴れたりして脱げてしまうと全部が台無しになってしまう為、祭りの間中バーダックが抱きかかえていることになったのだった。
「一体何時間見世物になってりゃいいんだ?」
「後3時間・・・程度だな。ワシとてさっさと済ませられるものならば終わらせたいと思っている」
隣でブロリーを抱えているパラガスも内心うんざりしていた。
祭り、と言っても当事者には暇で退屈な催しでしかない。
惑星中のサイヤ人やツフル人が集まり、城下町も他の星からの行商人で賑わっている。
そんな楽しげな声も、身動きの取れないバーダック達を苛立たせるのに一躍買っていた。
主役である赤ん坊とその親は城下を巡った後、王宮の庭に特設された東屋にて祭りが終わるまでの間、ずっといなければならないのである。
そこでは城に勤めている文官(主にツフル人)や武官(主にサイヤ人)の他、交流のある星の重臣達が代わる代わる祝辞を述べ、中にはスカウターを持ち込み赤ん坊の戦闘力を測っていく者まで出る始末。
「・・・・・・・・・・・・そろそろガキもやべぇ気がすんだけどな・・・・・・・・・・・・・」
腕の中の赤ん坊がもぞもぞと身動きを始めている。
「確かに・・・・・・・・・・・・」
ターレスとラディッツは最初こそ面白そうに周りをうろうろしていたが、次第に暇を持て余すようになり先程城下へと遊びに出てしまった。
聞き飽きた祝辞の列も、どれだけの人が集まっているのやら。最後尾はまだ見えない。
「この子等はとても数奇な星の元に生まれておりますな」
カカロットの動きに気を張っていたバーダックが顔を上げると、目の前には宮廷占者として王宮に仕えているカナッサ星人がいた。
カナッサ星人の一部には不思議な力を持つ者がいるが、この宮廷占者は吉凶の判断をするより何時どの星に攻め込めば効率良く戦闘が行えるかをはっきりと伝える為、軍師的な立場でもあった。
周囲の者曰く、彼は未来が見えているのではないか、と。
「不運に見舞われる事も多いが、周囲の星に恵まれている。これは…直ぐにも証明されるが、この子の存在により大事が決する事もある。将来を思うなら、この子の好きなように過ごさせるのが一番だ。星々との巡り会いがこの子の力を更に引き出す事になる」
カナッサ星人の占者はそのままブロリーの前へと移動する。
「この子もまた、強い星の元に生まれている。あちらの子が自ら光を発するとすれば、この子はその光を受けて輝く双子星と言っても良いだろう。その為、運命を共有する事が多い。だが…目を離してはならない。己の力を己の意思で発揮する為の努力が必要だ。出来る限りあちらの子と共に過ごさせれば運命の糸は繋がり、より良い方向へ向かう事になる」
直接、占者の占いを聞くのはバーダックもパラガスも初めての事だった。
噂には聞いていたがこれ程はっきりと断言するとは思っていなかった為に、思わず話に聞き入ってしまう。
「了承した。2人に関しては十分に貴殿の言に沿う事にする」
パラガスの言葉に満足げに頷くと、カナッサ星人はその場を後にした。
その後はまたお決まりの言葉しか口にしない祝辞が延々と続く。
そろそろ祭りも終盤へと差し掛かった頃、不意に城門の方が騒がしくなる。
いつの間にか、城下のざわめきも消えていた。
「み、南の銀河よりわ、惑星フリーザからフリーザ殿が祝辞を述べに参られました!」
その場に居た文官・武官が顔を見合わせた。
現在、惑星フリーザとは不可侵の条約を結ぼうと、王を中心に奔走している最中である。
余計な揉め事を起こしたくないのだが、本日の主役席に惑星一のトラブルメーカーとも言えるバーダックがいるのだ。交渉に当たっている者達は余計な事はしてくれるな、と祈るしかない。
静かに人の波が右へ左へと分かれる。
「フリーザ殿、遠路遥々ようこそ御出で下さいました」
サイヤ人より小柄なフリーザの左右には側近のザーボンとドドリアが控えている。
フリーザの父・コルド大王は既に南の銀河の半分を掌握していた。
そしてフリーザもまた、父王の命により東の銀河にて侵攻作戦を展開中なのだが、思いもよらない抵抗にあい、惑星群へ派兵する兵士の数が不足し始めてしまったのである。
これには西の銀河を侵攻中のフリーザの兄・クウラが裏で糸を引いているのだが解ってはいても証拠が無い為、表立った抗議が出来ず兵力を消耗する日々が続いていた。
そこでフリーザが目を付けたのが一族の侵攻対象になっていない北の銀河で最強と言われる「戦闘民族サイヤ人」の力であった。
だが、双方が合意できるだけの条件が整わず、交渉は平行線をたどっている。
「王権交代後の始めてのお子さんであり、文武両道で知られる王補佐とサイヤ人一の戦士のお子さんとなればお祝いに来ない訳にはまいりませんよ。そちらがパラガスさんのお子さんですね」
パラガスは不本意ながらも、差し出されたフリーザの手にブロリーを渡した。
「産まれながらにこの戦闘値とは…流石としか言えませんね」
フリーザはブロリーの戦闘力を測るとパラガスへブロリーを返し、その手をバーダックへと向けた。
「さて、こちらが狂戦士バーダックさんのお子さんですか」
差し出された手に、ずっと抱かれたまま退屈していたカカロットは自ら乗り移り、嬉しそうに笑い始めた。
「随分と元気なお子さんですね。さて、戦闘値は…」
フリーザがスカウターを操る為に片手を離した瞬間、カカロットがバランスを崩してしまう。
「フリーザ様!」
倒れ落ちるカカロットを受け止めるべくザーボンが手を伸ばしたが、間一髪フリーザ自身の手によりカカロットの落下は免れた。
「失礼。子供に障るのは久しぶりなもので」
心なしか、バーダックとパラガスの顔が青ざめていた。
それもその筈。
フリーザが現在掴んでいる場所に大きな問題があった。
それは2人の予想を裏切る事無く、ブチッと音を立てる。
今度こそ落下してしまったカカロットは先程傍まで来ていたザーボンがしっかりと受け止めた。
「あ……赤ん坊のシッポが!」
「産まれて間もないというのに…なんと可哀想な…」
東屋に集まっている者達にとって、信じられない光景だった。
そう、事実を知らないものには、故意ではないとはいえ祝の場でサイヤ人の象徴とも言えるシッポをフリーザが抜いてしまったとしか見えなかった。
当のカカロットは遊んでもらったと勘違いしているのか、ザーボンの腕の中で先程以上にキャッキャと笑っている。
「バーダックさんのお子さんには申し訳ない事をしてしまいましたね」
「いやいや、この程度の事をお気になさらずとも。そうだろう、バーダック」
「あ、あぁ!シッポなんざまた生えるからなぁ!」
これで後々シッポが抜けた理由を考える必要がなくなった。
内心「やった!」と思っている事が表情に出ないように、気を引き締める。
「そう言って頂けると助かりますね。ザーボンさん、ドドリアさん。そろそろ戻りましょうか」
フリーザが振り返ると、2人ともカカロットを相手に遊んでいたのか慌てて姿勢を正していた。
「…パラガスさん、条約の件ですが先日そちらから送られてきた条件でサインさせて頂きます。後日この者達に持たせますので、ベジータ王によろしくお伝え下さい」
今まで調印を渋っていたフリーザが合意する気になったのが罪悪感からなのか、これ以上サイヤ人を刺激しないためなのかは不明であるが、交渉をしていた者達にとっては願ったり叶ったりである。
「………一石二鳥とはこの事だな」
フリーザの姿が完全に見えなくなると、見守っていた者達にも安堵の表情が浮かぶ。
カカロットのシッポが抜けた瞬間、バーダックが暴れだすと誰もが思っていたのだ。
そんな事になれば条約どころではない。
最悪の場合この場で戦闘が始まっていてもおかしくなかったのだ。
「全く、フリーザ様々ってとこだよなぁ。いいタイミングでシッポも取れたしよ」
ザーボン達に構われたのが余程楽しかったのか、カカロットは未だにフリーザ達が立ち去った方向を眺めている。
「まさかこれしきの事でフリーザが条約に調印するとは思わなかったがな…」
パラガスは先程のカナッサ星人の言葉を思い出していた。
『直ぐにも証明されるが、この子の存在により大事が決する事もある』
彼の言葉が真実を紡いでいるならば、ブロリーの潜在能力を見誤らない様にしなければならない。
「………バーダック………そう言えばまた家を壊したそうだな」
「つい…な」
先日の《カカロット拳骨騒動》の後、帰宅したバーダックはラディッツと再び揉め、自宅一帯を破壊。現在は下級戦士用の官舎に仮住まいをしている。
「この際、こっちに引っ越して来たらどうだ。お前ならば問題ないだろう?」
バーダックが居住を構えていた地区は住宅が密集している通称「下流区」であるが、パラガスの住む「上流区」ならば一軒一軒の敷地が広い為、バーダック達の親子喧嘩による被害も少なくなる。
「テメェの事だ。どうせさっきの占い師の言葉が気になってんだろ?ワリィがそっちには気にくわねぇヤツが多いからゴメンだな。ま、何処にも行く場所がなくなったら考えてやるよ」
そんな話をしている頃になってやっと、ベジータ王が東屋に到着した。
フリーザの来訪を報告されたが来賓との挨拶を中々切り上げる事が出来ずやっとの事で来たのだが、既にフリーザは空の上の人となっている。
だが王はその場に居た文官・武官達からフリーザが条約に合意したと聞くと慌しく王宮へと戻ってしまった。
余談であるが、その後カカロットの元を訪れるザーボンとドドリアの姿が度々目撃される事となる。
フリーザとの条約が締結した事により、惑星ベジータは更に豊かになりつつあった。
サイヤ人の戦闘力。
ツルフ人の技術力。
そして新たに手に入れた東の銀河ならびに南の銀河との交易権。
一部の大商人にのみ許されていた権利を手にした事により、傘下の星々としか行われていなかった公益事業が拡大。商業計画をツフル人が立て、他星の商人達の護衛をサイヤ人が行う事により、後に莫大な利益を上げる事になる。
惑星ベジータの傘下になる事でその権利を手に入れられるとの話を聞きつけ、自ら傘下に加わる惑星も増えつつあった。
条約によりフリーザから要請された西の銀河制圧への派兵は、他の種族に比べて人口の少ないサイヤ人にとって国力の低下を招きかねなかったが、バーダックを中心とする戦闘力の高いものを選抜する事で30名程度の派兵で済んだ事により、その危機を免れた。
また、この派兵はフリーザの一族に「サイヤ人の力」を示す絶好の場となり、惑星ベジータはフリーザ一族の侵略の対象から共存の対象へと変わりつつあった。
DBには何度ハマりなおした事か。
実は昨年、十数枚組みのCD-BOXを購入してしまいました(笑)
殆どのCD持ってるのに…持ってるのに買ってしまった…
今までの人生で一番お金をつぎ込んでいるのはDBだと思います。
第2話ですが、まだまだ原作主人公は赤ん坊です。
それにしてもトリコSSと比べると1話が長い長い…
※当時(2006年5月発行)の作品を一部改定しております※
実は昨年、十数枚組みのCD-BOXを購入してしまいました(笑)
殆どのCD持ってるのに…持ってるのに買ってしまった…
今までの人生で一番お金をつぎ込んでいるのはDBだと思います。
第2話ですが、まだまだ原作主人公は赤ん坊です。
それにしてもトリコSSと比べると1話が長い長い…
※当時(2006年5月発行)の作品を一部改定しております※
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「なぁ、ドクター。こんなチビでも治るんだよな?」
メディカルマシンの中に横たえられているカカロットの姿に不安を覚える。
「多分、としか言えんな。ターレス、張り付いておっても状態は変わらんぞ?」
機械で治療している以上、誰にも手を出す事は出来ない。万が一、容態が変わったとしてもメディカルマシン以上の治療方法は無いのだ。
「……オレもラディッツも楽しみにしてたんだ。ほら、オレ等の下ってベジータだけだろ。あいつは王子でエリートだから一緒に居られねぇじゃん。けどバーダックの子供ならオレでも一緒に居られる。パラガスのおっさんの子はなぁ…やっぱエリートになっちまうだろうし。それにお袋さんと約束したんだ。こいつが一人前になるまで守ってやるって」
「そうか。じゃが守るも何も、今のベジータ王ならば何も問題はなかろう」
カカロットの治療を行っているメディカルマシンの戦闘力測定器は数値が上下している。普通のサイヤ人には見られない反応だった。
「先王の頃ならば…強制的に研究所へ連れて行かれていただろうがな」
僅か5年前。
今の王は先代の非常な行いに終止符を打つべくクーデターを起こし、父である先代を葬って王座についた。
先代は同族に対する情も、血族に対する情も一切持ち合わせない冷酷な男であった。惑星中を巻き込んで行った非情の極みとも言える実験を行う施設を作り、そこに強制的にある種のサイヤ人を収容していたのである。
《ルートタイプ》
バーダックやターレスの様な外見的特長を持つこのタイプは遺伝性が低い代わりに、何かしらの突出した能力を持つ者の出現率が他のタイプに比べて圧倒的に高かった。
その上、千年以上前に現れた伝説のサイヤ人もまたルートタイプであったとの記録が残っているのである。
先王は最強の戦士を作り上げるべく、非情な実験と過酷な戦闘訓練をルートタイプのサイヤ人達に行っていた。
もし、未だに先王が生きていたとしたら。
ルートタイプであり、前例のない【変動する戦闘力】を持つ赤子など、確実に実験施設に送られモルモットにされていた事だろう。
「オレもそこに居たらしいけど、研究所の事はあんま覚えてねぇんだよな。戦闘訓練も出来ねぇようなガキだったからかも知れねぇけどさ」
現王は戦闘訓練を受ける年齢を定めていないが、先王は満5歳になった子供をタイプに関係なく戦闘訓練に強制参加させていた。体の出来ていない子供達はそこでも多くが命を落としたのである。これもまた、サイヤ人の人口減少に拍車をかけていた。
大人達にとっては忘れたくとも忘れてはならない記憶だが、当時2歳だったターレスとラディッツにはそんな過酷な記憶は無い。
「でもバーダックの家に引き取られてからの記憶は全部残ってんだよ…同じ頃の筈なのによ。ま、いらねぇ記憶が消えてんだから別にどうでも良いんだけどな」
先王の死後、研究所にいた子供達は親元へと帰された。しかし、中にはターレスの様に先王に親を殺され孤児となった子供も多くいた。
帰る家の無い子供達は現王の計らいにより、秘密裏に里親の元へと預けられ国の補助の元、育てられる事になったのである。
ターレスを引き取ったのは同じ年の子供のいるバーダック夫妻だった。
里子達の事情を知らない一部の者たちはバーダックの隠し子だの、ラディッツが実は二卵性双生児だっただのと様々な噂を流していたが、ターレスの事情を知っているバーダック夫妻はその噂を肯定も否定もしなかった。
「変な噂とか、ラディッツのバカな行動とかお袋さんのカミナリとかは全部覚えてんだよな…なぁ、カカロットに今回の…親父さんに殴られた記憶なんて残ったりしねぇよな?」
「お前さんの場合は赤子の時に打たれとった薬剤の影響もあるやも知れんが、幼い頃の記憶をはっきり覚えている方が稀なんじゃ。もし覚えとったとしてもお前さん達が大事にしてやればそっちの記憶の方が大きくなるじゃろうて」
その時、治療室の扉が開き(正確には抉じ開けられ)メディカルマシンを一目見るなり、物凄い勢いでバーダックがドクターへと詰め寄った。
「どういう事だ!この程度の怪我なんてものの数分で治んだろうが!」
「バカモン!お前さん達に行う治療では赤ん坊の体が持たん!時間がかかるのは当然じゃ!…まったく。お前さんのお陰で大事な生誕祭が延びてしまったらどうするつもりじゃ。惑星中の皆が楽しみにしていると言うのに」
「そうそう、なんつっても狂戦士バーダックと超エリート戦士で王補佐のパラガスの子が同じ日に生まれたって、もうあちこちでお祭り騒ぎなんだぜ?親父さんの無茶で先送りになっちまったら暴動でも起こったりしてな」
カラカラとターレスは笑いながら言うが、あながち的外れな事ではない。
生誕祭はサイヤ人にとって大事な催しだった。
先王が一度廃止したものを現王が復活させたのだが、宝である赤ん坊の未来を祝し、交流のある星々からも祝賀の使者が訪れる。
まして今回は平和な時代になってはじめての赤ん坊。
準備は赤ん坊が母親の胎内にいるうちから始まっており、開催時期も誕生から1週間後と決まっている為、誰もがその日を心待ちにしていた。
「……あれって本気だったのか?パラガスのとこのガキだけじゃねぇのか??」
「当たり前だ!お前は先の戦いの功労者だぞ!」
バーダックに壊され半分開いたままになっていた扉からベジータ王が怒鳴り込んできた。
「王!そのお姿は一体…」
「ベジータ…お前、王様になってまで何やってんだ?久々に誰かさんと喧嘩でもしたのかよ」
入ったきたベジータ王だけでなく、その後に続いているパラガスとラディッツまでもが何故かボロボロになっていた。
困り果てた顔をしたパラガスの腕の中には、パラガスの子であるブロリーが抱かれておりキョロキョロと何かを探す様に室内を見回している。
「赤ん坊に手を上げる訳にはいかんだろう」
「カカロットがいなくなった事に気付いたブロリーが暴れてしまってな…」
赤ん坊とはいえ戦闘力は10,000。並みの戦士ならば、相手をする事すら出来ないだろう。
「カカロットが泣いてた時にゃなんともなかっただろうが」
「保育器は遮音設計されているからのぉ…カバーさえ閉まっておれば声は一切漏れん」
「ん?じゃあカカロットの保育器は壊れてたってのか?」
確かに、あの大声は遮音されていなければ公害にしかならないが。
「あ!オレ、見に行った後完全に閉めなかったかも…」
騒音公害の原因はラディッツであった。
「にしても、赤ん坊の癖にもう人の見分けがつくのかよ。パラガスの子らしいっちゃらしいけどな」
室内を見回していた視線が、メディカルマシンの中のカカロットを見つけると、手足をばたつかせてそちらへ行こうとする。
「カ…カ……」
「おじさん!」
ラディッツに促されパラガスがブロリーをメディカルマシンの前へと連れて行くと、ブロリーは懸命に手を伸ばしていた。
「ほらな、カカロットちゃんと居ただろ?」
メディカルマシンの覗き窓からカカロットの姿を確認させるとブロリーが大人しくなった為、ラディッツも先程の惨劇を経験した大人達も胸を撫で下ろした。
「しかし流石は狂戦士の子だな。たった一度の回復で戦闘力が1000倍に上がるとは」
「そうですな。もとが低かったとはいえ、2から2,000への増加は驚異的としかいえませぬ。最も…それだけ重傷じゃったとも言えますが」
瀕死の状態から回復する度に普段とは比べ物にならない位、戦闘力が大きく上がるのがサイヤ人の特性である。しかし。
「馬鹿な!一度の回復でそこまで上がるわけが無い!」
通常のサイヤ人ならば100から300程度。産まれながらに戦闘力の低い者が高い数値まで上げるのが困難な理由はこの上昇率の限界にあった。
「王子…カカロットにはバーダック以上にルートタイプの特性が出ているようでしてな。バーダック、お前さんなら2,000や3,000の上昇は珍しくなかろうて」
「最大で5,000上がった事もあったな。オレの場合は元から2,000はあったけどよ」
戦闘力の上昇値はサイヤ人のタイプにより多少の特性がある。
中でも希少種であるルートタイプは他のタイプとは一線を画していた。その次に王族の特性であるグリーズタイプ、ブロリーのカルゼタイプ、パラガスのリーリタイプと続く。ただし、ルートタイプ以外は産まれながらの戦闘力も高くエリートタイプに分類されるが、平均して1,000以下の子供しか産まれないルートタイプは下級戦士として扱われていた。
「ちっ、3,000から下がりやがった………もう2・3度やりゃ10,000越すか…?」
この男ならばやりかねない。
実際にラディッツとターレスも幾度と無く治療室送りになっており、そのお陰とは言いたくないが2人とも7歳にして戦闘力が10,000を超えていた。
「…………ダッ!」
と不振な視線を向けられていたバーダックの足が小さな掛け声と共に思い切り薙ぎ払われた。
身構えてなかったバーダックは受身を取れずに勢いよく背後へと倒れこむ。
「っっっっってぇ!このガキ!何しやが」
「ダッ!」
顔を起こそうとした所へ小さな手の2撃目が繰り出された。
カカロットの前に張り付いていたブロリーがバータックから不穏な空気を感じ取り、先手を打ったのである。
「さっきからブロリー怒ってたから、親父気をつけた方がいいぞ。そいつ結構強いし」
「離れろ!このクソガキ!」
「人の子に向かってクソガキとは何だ!」
「クソガキはクソガキだろうが!」
バーダック対ブロリーの戦いが始まるのかと思いきや、バーダック対パラガスの戦いが勃発してしまった。
双方が本気を出していない事は治療室が中々破壊されない現状を見れば明らかだったが、それでも戦闘力の高いもの同士の争いに身の危険を感じてしまう。次第にエスカレートすれば周囲に被害が出るのは目に見えていた為、王が間に入り双方を宥め始めた。
そんな騒ぎを尻目に、メディカルマシンへと近づく者がいた。
「王子、どうかされましたかな?」
ベジータ王子の目に映る存在は、何時死んでもおかしくないような弱々しい存在に見えた。
「…こんなヤツがいつかオレの戦闘力を上回るのか?」
カカロットの父であるバーダックはベジータ王子の父であるベジータ王以上の戦闘力を持っている。
驚異的な上昇率を受け継いでいるカカロットが自分を追い抜く様は想像するまでもなかった。
「それはこの子次第でしょうな。バーダックの様に好んで戦いに出る性格でしたら、戦闘力も大きく伸びましょう。ですが、母親に似たなら進んで遠征に出る事もありますまい。彼女は戦場よりも家族と穏やかに暮らす時間を大切にしておりました」
戦士としての強さは一流であったが、現王に代わってからは一度も遠征に出ず、ラディッツとターレスを育て上げ、命を失う事を解っていながら子を産んだ。そんな母親にラディッツの性格は強く影響されているが、共に育ったターレスはバーダックの影響が大きい。実際には育ってみなければ、どうなるかは解る筈もないのだ。
「オレより…オレより強くなる下級戦士など必要ない!」
ベジータ王子の手のひらにエネルギーが集約し始める。
「何をしている!」
王が気付いた時には、エネルギー弾はベジータ王子の手から打ち出されていた。
ベジータ王とパラガスの手によりその身を押さえつけられるまで放たれ続けたエネルギー弾によりメディカルマシンは大破していた。
「いっってぇ…ベジータ!ガキにどういう躾してやがんだ!」
一撃目のエネルギー弾が着弾した直後、ベジータ王子を取り押さえるのではなく我が子を庇う為にバーダックがその身を滑り込ませた為、カカロット自身への直撃だけは避けることが出来た。バーダックの傷も、傷と言えるような一つも無い。
「う………うわぁぁぁぁぁぁん!」
「ッバカ!コノ程度で泣くんじゃ…ってベジータ!パラガス!避けろ!」
バーダックの言葉が2人の耳に届くのとほぼ同時に、強力なエネルギー弾がベジータ王子を掠めた。
それは医療棟の壁をぶち破り、空へと吸い込まれていく。
「ブ…ブロリー…?」
パラガスは目の前の赤ん坊が本当に自分の子供なのか困惑していた。
サイヤ人特有の黒い髪は青へ、漆黒の瞳も翡翠を思わせる色へと変色している。
「パラガス様!ブロリーもターレスと同じく既に自我が覚醒されております!このままでは王子の御身が!」
ブロリーの小さな手のひらには、手のひらの何倍もの大きさでエネルギーが形成されている。
「ブロリー!止めんか!」
父であるパラガスの声も、ブロリーには届いていなかった。
その瞳が捉えているのはベジータ王子唯一人。産まれたばかりの赤ん坊とは思えない殺気の前に、ベジータ王子は身動きすらとれずにいた。
「おい、クソガキ。これでもそいつをぶっ放すか?」
後は、ベジータ王子に向かってエネルギー弾を投げつけるだけ。そんな状態のブロリーとベジータ王子の間に割って入ったバーダックの腕には今尚、しゃくり上げているカカロットの姿があった。
「カカ…」
生きているカカロットの姿をその瞳に映すと、手のひらのエネルギーの塊は段々と小さくなり消滅した。
「ベジータ!今のうちのお前ンとこのガキどかせ」
ブロリーの意識がカカロットに移っている今しか、ベジータ王子を安全圏へ動かす事が出来ない。
「何故だ…王子のオレではなく何故あんな…」
ブロリーの攻撃は王子の目には入っていなかった。
自分を追い抜く可能性を持つ赤ん坊。彼の目にはそれしか入っていなかったのである。
ベジータ王にも覚えのある感情だった。
自分より高い戦闘力を持って生まれた者は対して気にならないが、自分より下の戦闘力の者が自分を抜かす可能性がある。ベジータ王は同年代に産まれたバーダックが最強の称号を手にした時の悔しさを今でも忘れられずにいる。忘れる事は出来ないが…バーダックがどのようにしてその力を手にしたかも知っていた。
他者よりも辛い訓練を受け、激戦区へと送られるのは当たり前。
バーダックの送られた先を聞いた時、自分がどれだけ楽な戦地を振り分けられているのかを知り、楽な事しかしていない自分が彼の強さを妬む資格が無い事を知った。
最も…バーダックは現王に代替わりをした今でも、自分から激戦区となるであろうと予想されている遠征先を選んでいるのだが、これはまた別の話である。
「悔しければ抜かれぬ様に努める事だ。抵抗出来ん赤ん坊を攻撃するなど王子という立場にいる者が行う行為ではない。殺意を持っての同族殺しは大罪になると、忘れたとは言わさんぞ。未遂に終わったとはいえ、王族が罪を犯したならば、それ相応の処罰をせねばならん」
あの時、バーダックが「子を守る」方に反応していなければ、確実にカカロットは命を落としていた事だろう。
王族だからとて、法を犯して処罰を真逃れるすべは無い。
「カカロットは無事だったんだ。態々事を大きくする必要はねぇよ。そんな事言ったらブロリーも処罰の対象になっちまうじゃねぇか」
当のブロリーは必死にカカロットを宥めようと既にベジータ王子の事は頭に無いようだが、先程の攻撃には明らかに殺意が篭っていた。
「いや、赤ん坊とはいえ自我を持って王子を攻撃したからには処罰を受けねば…」
「相変わらず頭がかてぇんだよ。2人とも。んな深刻な顔してっと眉間のシワが深くなるぜ?カカロットも無事、王子も無傷、けが人なし。ついでに言や、此処にいるのは身内同然のヤツばかり。無理に処罰する必要はねぇって言ってんだよ」
ベジータ王子の【攻撃性の強さ】がその出生にある事をバーダックは知っていた。
ツフル人の頭脳により完成した人工子宮。それを用いて実の子である現王の遺伝子を操作し、サイヤ人としての特性を強く持たせた、先王が作り上げた赤ん坊。
後の災いになると反対した周囲を押し切り、王子として育てる決心をしたのは現王その人である。
「大体、テメェらは物事を難しく考えすぎなんだよ。やられた側が良いって言ってんだ。何の問題がある」
「…親父さんの考え方が単純すぎんだよ…」
ボソッと呟いたターレスにすかさずエネルギー弾が打ち込まれる。
「今!手加減しなかっただろ!直撃食らったら死んじまうじゃねぇか!」
「うるせぇ!この程度の攻撃が避けれねぇような鍛え方してねぇだろ!」
殺意が篭って無くても、十分相手の命を奪える攻撃なのだが…
「…ベジータ。無期限の謹慎処分とする」
後ろで始まった親子喧嘩を心の中で羨ましく思いつつも、処分を伝える。
「悔しければ強くなれ。お前は誰よりも強くなれる可能性を秘めている」
先王の残したデータを見る限りでは、ベジータには様々な遺伝子操作を行った痕跡が残っており、まさに純粋な「原初の」サイヤ人に最も近いサイヤ人と言える存在だった。
ベジータ王子が道を見誤らなければ、歴代最強の王になれるだろう。
無線でナッパを呼び出すと、王子を連れて退出する様に命を下す。
ナッパに促されたベジータ王子は一瞬、視線をカカロットへと向けたが直ぐに忌々しげな表情へかわりその場を後にした。
「…お…親父…?」
静まり返ってしまった部屋の中でラディッツの遠慮がちな声が響いた。
「あぁ?何だ」
「シ…シッポ…」
ぐずっているカカロットをあやそうと抱き上げた時、ある筈の感触が無い事に気付いた。
「…エネルギー弾の余波でやられた様ですな。こうも根元までやられておっては…」
治療途中だったカカロットを別のメディカルマシンへと移す。
カカロットの傷はまだ完全に言えてはおらず、僅かながら出血も続いていた。
「メディカルマシンでもシッポの再生だけは出来ねぇんだよな…確か」
以前、自分で抜いて試した事があったが、何故かシッポが再生する事はなかった。
その時のドクターの説明ではサイヤ人が自主的に抜いた場合はメディカルマシンが傷として判断しない為、何の反応もおこさないのだという。
「う~む…少々問題があるかも知れんのぉ…」
だが今は、シッポの付け根に傷があった。
この傷を機械がどのように判断するのかが、誰にも判らないのである。
サイヤ人にとってシッポは真の力を解放する為に必要不可欠なものなのだが…
「まぁ…起きちまった事は仕方ねぇな」
シッポがあろうがなかろうが、普段の生活に支障は無い。
「申し訳ない」
ベジータ王が深々と頭を下げる。
「バーカ。王が簡単に頭下げんなって何度いや解んだよ」
「王に向かってバカとは何だ!お前こそ何度その言葉遣いを直せと言えば解る!」
「うるせぇ!べっつにベジータが良いって言ってんだから、テメェにとやかく言われる筋合いはねぇだろ」
「うるさいとは何だ!大体貴様は昔から目上の者に対する態度と言うものだな」
出会った当初からバーダックの態度は変わらない。
相手が下級戦士だろうがエリート戦士だろうが王族だろうが。普通ならば不敬だと思われる態度も、その強さが免罪符となっていた。
強さが全て、という時代であったならばバーダックは間違いなく王になれただろう。
「なぁ…親父…生誕祭どうすんだよ?」
言い合いを続けていたバーダックとパラガスの声がピタと止まる。
カカロットの怪我だけならば生誕祭には十分間に合うが、もしメディカルマシンでシッポが再生されなかった場合、再生には個人差もあるが3~6ヶ月はかかってしまう。
数日後に控えている生誕祭に間に合うわけがなかった。
「シッポ…か…」
誰とは言わずに呟かれた言葉を最後に、思い沈黙がその場を支配した。
バーダックFANな神薙がバーダックの為だけに作った作品。
原作は大きく無視。
バーダックに幸せになって欲しいだけです!
Past:過去
Present:現在
Future:未来
の3部構成+外伝となります。
さてさて…過去は何回の掲載で終わる事か…
Pastはオール純血サイヤ人しか登場しませんのであしからず。
※当時(2006年5月発行)の作品を一部改定しております※
原作は大きく無視。
バーダックに幸せになって欲しいだけです!
Past:過去
Present:現在
Future:未来
の3部構成+外伝となります。
さてさて…過去は何回の掲載で終わる事か…
Pastはオール純血サイヤ人しか登場しませんのであしからず。
※当時(2006年5月発行)の作品を一部改定しております※
・・・つづきはこちら
惑星べジータ。
戦いに明け暮れる戦闘民族サイヤ人の住むこの星で、2つの新たな命が誕生した。
「戦闘力10,000か。末恐ろしいガキだな」
数人のサイヤ人がスカウターを弄りながら、興味深げに新生児室を覗いている。
「と、思えば…こっちのガキは2だとよ。逆の意味で珍しいが使いものになるのかね」
真逆の力を持って産まれた赤ん坊。
戦闘力はサイヤ人にとって最も重要な数値だった。
生まれた時の戦闘力でランク分けされ、また高ければ高いほど上昇限界数値も高くなる。逆に低ければそこそこの上昇しか期待できない。
「使いもんになるよう育てんのが、親の務めってもんだよなぁ?」
背後から発せられた予期せぬ声に、笑ってた顔が一瞬にして引き攣る。
「バババババババババーダック!いいいいいいい何時の間に!」
下級戦士でありながら、惑星べジータで最強の戦闘力を持つ者に与えられる称号【狂戦士】を名乗る事を許された唯一人サイヤ人・バーダック。
下級戦士がエリート戦士を凌駕するほどの戦闘力を身に付けるにはそれ相応の危険を伴っている為、狂戦士にはエリート戦士以上の特権が与えられている。
チームメンバーの選択権は勿論のこと、居住区や戦果給金も下級戦士とは比べ物にならない。
そんな特権を欲して危険な戦場へと赴く者も多いが、大抵は戦闘力の差を測りきれずに命を落としてしまう。
バーダックも常に自分の戦闘力より上の戦場を選んでいたが、見事に帰還を果たしてきた。無傷とはいかず、度々重傷を負っていたが致命傷を受ける事はなく、またサイヤ人の特性が幸いし戦闘力の大幅な増幅を手伝っていた。
またその戦果も大きく、一部のエリート戦士以外はその戦い方に文句を言う事が出来ず、逆にバーダックの部隊にはいりそのお零れに預かろうという卑屈な者もいる程である。
「お前の口から親の務めって言われてもなぁ…」
「そうそう、絶対に『こんなガキ、俺のじゃねぇ!』って言うのに賭けてたのに」
バーダックの背後から更に2人のサイヤ人が姿を現す。
「トーマにセリパまで!お前ら…確か5日前に出撃したばかりじゃ…」
一度遠征に向かえば最低7日は帰って来れない。
まして、バーダック達が先日派遣された惑星は往復だけで3日はかかる距離にあった。
「あぁ…今回は大変だったんだぜ?追加人員は断るわ、バーダックが」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
突然響いた泣き声に、その場にいた者どころか、離れた場所にいた者達まで新生児室の前に何事かと集まってきた。
「随分と威勢のいい泣き声だな」
「バーダック!お前のトコのガキじゃねぇか!さっさと静かにさせろ!」
「なんだ、バーダックの子供かよ。どれどれ…おっ、良かったじゃねぇか!戦闘力が1,000もありゃ一安心だろ?」
その言葉に戦闘力を測っていたサイヤ人達とバーダックがスカウターのスイッチを入れた。
「う…嘘だろ…さっきは確かに2だったじゃねぇかよ…」
何度もスカウターを操作するが、表示される数値は1,000を示していた。
サイヤ人の戦闘力はそう簡単に上がるものではない。
先に述べた様に傷を負った状態から回復するか、日々のトレーニングで肉体を酷使する事により、それに耐えられるだけの戦闘力を得る事が出来るのである。
ただ泣いただけで戦闘力が上がるなど前例のない、有り得ない現象だった。
「ん?バーダックどうした?」
無言で新生児室へ入っていき、己の子の傍へと近づく。
子あやすバーダックの姿など想像もつかないが親としては当たり前か、と外野が関心しているのも知らずにその手が子供の方へと伸びていった。
ゴンッ、といい音が響く。
面白がっていた者も、文句を言っていた者も皆、顔を青ざめ言葉を失った。
加減はしているのだろうが【狂戦士】の称号を持つ物が産まれて間もない赤ん坊に拳骨をくらわせたのだ。
赤ん坊も一瞬何が起こったのか解らずに呆然としていたが、痛みが伝わると先程よりも更に大きな声で泣き始める。
「バーダック!あんた何やってんのよ!」
「セリパ、トーマ。スカウター覗いてみろよ」
セリパの講義を軽く受け流し、自らも面白そうにスカウターを弄っていた。
「お前なぁ…って、何…だってんだ…冗談だろ…」
他の面々もスカウターを覗き始める。
1,500…2,000…2,500…
戦闘力3,000を少し超えたところで、数値の上昇は止まった。
「オ…オレのスカウター故障してんのかな?」
「ぐ、偶然だな!俺のも故障したみたいだ」
果たしてこれ程の数のスカウターが一斉に故障する事などありえるのだろうか。
答えは否。
そう頭で解っていても、現実として受け入れる事がどうしても出来ない。
「やっぱりな。このガキは強くなるぜ」
そんな混乱した頭を現実へと引き戻したのはバーダックの満足げな言葉だった。
自らの子を殴り、その反応に満足した顔を向けるバーダックに対して周囲の視線は冷たい。
戦闘民族サイヤ人。
他の種族に比べて争いを好む性質ではあるが、親子の情を持っていない訳ではない。
元から出生率の低いサイヤ人は人口の少なさから、どうしても個々の血が近くなってしまった。その為、母となる者は子を宿す事で更に濃い血を内包する事になり、血の力に負けて出産時に死んでしまう率が高かった。
無事第一子を出産したとしても、第二子を産んで無事でいたものは居ない。
それでも子がいなければ種は滅んでしまう。
ツフル人の頭脳をかり人工子宮での出産も進められているが、何故か使うものは少なかった。
命と引き換えに産まれて来る子供達は、命を奪う事を常としているサイヤ人にとってとても大切な宝なのだ。
それを殴ったのである。
いくら珍しい現象が起こったにせよ、許せる行為ではなかった。
「騒がしいぞ!何をしている!あの声は何だ!」
二度目の泣き声は医療棟の外にまで響き渡っていた。
もう1人の赤ん坊の父親・パラガスが新生児室へと駆けつけ、その後ろの人ごみを掻き分けながら2人の
子供が飛び出してくる。
「よぉ、ラディッツ、ターレス」
「よぉ、じゃねぇよ!馬鹿親父!」
長い髪の少年・ラディッツがバーダックの傍らにいる赤ん坊を抱き上げる。
頭部を触るとベタッと赤い液体が手についた。
「カカロット!」
「骨は…大丈夫みてぇだな。全く…親父さんも無茶しやがる」
バーダックと同じ顔をした少年・ターレスが赤ん坊の傷を確認する。
「親父のポッドが戻ったって聞いて嫌な予感がしたんだ…赤ん坊相手に何してんだよ!」
「!ラディッツ!急いで治療室に行くぞ!」
赤ん坊の傷自体はそれほどでもない様に見えたが、寝かされていた保育器の布団は真っ赤に染まっていた。
それを確認したターレスに促され、2人は急いで治療室へと向かう。
集まっていた大人達も事の重大さに素早く通路を開け、赤ん坊を抱く子供の後姿を見送った。
「んだよ、あの程度で大騒ぎしやがって」
「あの程度ではないだろう!この大馬鹿者が!」
パラガスの言葉に誰もが同意した。
「お前は自分の戦闘力がどれ程のものが解っていないのか!戦闘力100,000のお前が2しかない子供に手を上げればどうなるか…下手をすれば殺してしまうのだぞ!」
「だから手加減してんじゃねぇかよ。そんなに大騒ぎする事じゃねぇだろ?それにパラガス、あのガキの戦闘力は今は3,000だぜ?」
周囲の視線がますます怜悧なものへと変わる。
「手加減しきれておらんからあのような事態になったのが解らんのか!」
確かにバーダックにしてみれば手加減をしたのだろう。
だが、2だろうが3,000だろうが、バーダックの戦闘力からしたら塵にも等しい存在でしかない。
その気はなくとも、簡単に命を奪う事が出来るのである。
「……いいか、バーダック。暫くの間、カカロットは私が預かる。ブロリーと同じ日に産まれたのも縁と言うものだろう。お前には任せておけん!」
「なっ、ちょっと待て!そういやカカロットって名前はテメェが付けやがったのか!」
先程、ラディッツもそう呼んでいた。
母親は出産時に命を落としている。
遠征に出発する前、名前を決めている事など聞いてはいない。
「母さんが決めてたんだよ!親父が遠征に出てる間にカカロットが産まれそうになっちまって、親父が間に合いそうにもないからって!あんたはあれ位の血の量見慣れてっからどうってことないなんて思ってんだろうけど、赤ん坊にとっちゃ大量出血なんだぞ!何でそんな事も解んねぇんだよ!」
目に涙を溜めたラディッツが治療室から戻ってきていた。
治療室のドクターはカカロットの状態をみるなり、重傷者用のメディカルマシンの使用を決定した。
赤ん坊に使用した前例はないが、泣き声も上げなくなってしまった状態から判断し使用に踏み切ったのである。前例がないだけにどのような副作用が起こるか解らない、とも言っていた。
「あんたじゃカカロットを殺しちまう…パラガスさんはおばさんが死んだばっかだったのに、母さんに付き添ってくれたんだ!あんたと付き合いが長いからって、その後の手続きなんかも本当はあんたがやる筈の事も全部やってくれたんだよ!」
「へぇ…そりゃ手間かけたな。だがなパラガス。あのガキの面倒は俺が見る。こんな先の面白ぇガギを他人に預けられっか」
バーダックの考えが解らなかった。実の子であるラディッツにも。
集まっていたサイヤ人達は新生児室から出てきたバーダックを取り囲み、怒りをあらわにしている。
「あのなぁ、バーダック。悪かったと思ってんならさっさとガキのトコに行ってやれや。お前の口の悪さは昔っからだけどよ、行動にださねぇと勘違いされるばかりだぞ?」
そんな状況で暢気な口調のトーマが言葉を挟んできた。
「えっと、さっきの言葉を訳すと『手間をかけてしまないな、パラガス。好意はありがたいが自分の子供は自分で面倒をみる。他人であるお前にこれ以上迷惑はかけられない』ってとこかしらね」
拳骨には流石に驚いたものの、トーマとセリパそして当のパラガスは長年の付き合いからバーダックの感情表現が極端にひねくれている事を知っていた。
バーダックは好奇心が先行してしまうタイプだ。
後先考えず、その行いの結果は試して自分の目で見れば十分だと思っている為、体が先に動いてしまう。
今回の件に関しても、戦闘力の変動が本当に起こったのかを確認したかっただけの事で、あの程度のことでそこまでの怪我を負うとは考えてもいなかったのだ。
更に捻くれている性格のために、責められれば責められる程に悪態をつき、相手の感情を逆撫でしてしまう。
現に今も、医療棟の入り口とは逆方向
「あんた本当は名前も自分が付けたかったのよねぇ」
「でも良かったじゃねぇか。お前が考えてた名前の中にもカカロットってあったんだからよ」
「えっ!あたし聞いてないわよ!いつそんな話したの!」
「前回の遠征の時だな。ほら、お前は連続で出撃するのはイヤだっつって出撃しなかっただろ?あん時だよ」
「嘘!あぁ~あ、あたしも出撃すればよかったなぁ…まぁ今回のバーダックも見ものだけどね」
話題の当人が怒りに身を震わせているのを知ってか知らずか、2人の会話は終わりそうにない。
なにより周囲の者たちの視線が、怒りから同情を含んだ哀れみの眼差しに変わっている事も、バーダックの怒りの増幅に拍車をかけていた。
「それになラディッツ。今回、出撃から5日で帰ってきたのだってバーダックが『満月なんか待ってられっか!』って無茶しやがったからなんだよ。お産に付き添いてぇなら」
「それ以上余計なこと喋んじゃねぇ!」
バーダックから放たれたエネルギー弾が廊下の突き当たりの壁を見事に吹き飛ばした。
「お前…直撃くらったらいくら俺でも死ぬぞ!」
「一度死んできやがれ!」
「あら、バーダック。出口はあっちよ?」
「う、うるせぇ!」
耳まで真っ赤にしながらバーダックはずかずかと治療室へと向かう。
余りの展開に涙ながらに文句を垂れていたラディッツも、引き取る発言をしたパラガスもその後姿を見送ってしまった。
角を曲がりバーダックの姿が視界から消えると、珍しいものを見たなと笑いの種を他の者にも伝えるべく集まっていたサイヤ人達もバラバラと解散していった。
「パラガス」
「…………」
「パラガス!」
「お、王!」
散っていった者達と入れ替わる様に、パラガスの後ろにはサイヤ人の王・べジータとその息子べジータ王子が立っていた。
「何をボーっとしている。お前とバーダック、双方の子が産まれたと聞いて、城を抜け出してきたと言うのに。バーダックの子もいないようだが何かあったのか?」
「いえ、実は…」
事の顛末を話そうとパラガスが口を開くのとほぼ同時に新生児室から先程とは別の泣き声が聞こえ、その声の主によりその場は騒乱と化した。
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プロフィール
HN:
神薙
性別:
女性
職業:
事務
自己紹介:
サークル活動時
《BlueSkyHero》では【蒼皇那鬼(ソウコウ ナキ)】
《Legend-Of-DragonBall》では【神薙(カンナギ)】
と、サークル名を変える時にPNまで変えたりしたお馬鹿です(笑)
どんなジャンルにも手を出しますが、自分が書くジャンルは少なかったりします…
今はタイバニ(兔虎)にもハマってたり…
基本、親父好きです(爆)
《BlueSkyHero》では【蒼皇那鬼(ソウコウ ナキ)】
《Legend-Of-DragonBall》では【神薙(カンナギ)】
と、サークル名を変える時にPNまで変えたりしたお馬鹿です(笑)
どんなジャンルにも手を出しますが、自分が書くジャンルは少なかったりします…
今はタイバニ(兔虎)にもハマってたり…
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