独り薄暗い部屋の中で眠る。
　人の気配は全く無い。
　待つのは嫌いだった。
　産まれてから3年。
　直ぐに会えると思っていた相手に会えずにいる。
　これ以上、父まで戻らなかったらと思うと、不安で胸が締め付けられた。
「父さん…」
　呼んでも答える者はいない。
　せめて、陽の光が射す晴れた日なら良かった。
　光の中にあの子の面影を見つけられる。

「…ブロリー？」
　パラガスは薄暗い部屋の中で、胎児のように眠る我が子姿を部屋の片隅に見つけた。
「………カ…カ…」
　普段、ブロリーがあえて口にしない名が漏れる。
　パラガスにも解っていた。
　ブロリーが赤ん坊の頃に数日一緒に居ただけのカカロットに会いたがっている事を。
　赤ん坊の時ですら、カカロットが隣から居なくなっただけで大騒ぎを起こしたのだ。
　それを今はパラガスの為に耐えている。
　たった3歳の身で父親の為にと、己の願いを封じ込めてしまっていた。
　パラガスもブロリーの願いを叶えたいと思っているが、他の者達が2人を会わせる事に反対していた。
　父親が【狂戦士】であろうとも下級戦士は下級戦士。
　エリート戦士に位置し、産まれながらに戦闘力の高いブロリーには相応しい相手ではないと。
　なにより、これ以上【狂戦士】バーダックの周囲に強い者が集まることを良しとしなかった。
　パラガスの館は終始見張りが付けられ、教育係りとは名ばかりの監視がブロリーには付いている。
　ブロリーはこの3年間、家の外に出る事も出来ずにいた。
　現状に対しベジータ王も反論したが、パラガス以外の側近及び先王の時代から存在している元老院は一歩も譲らなかった。

　元老院。

　パラガスが最も排除せねばならないと考えている一団であり、彼等の中には先王の考えに賛同していた者も少なくない。
　今のベジータ王が即位した途端に掌を返し、王の傍に付き纏い物事の大小に関わらず口を挟む。
　パラガスは彼等に対抗する術を練っている最中であった。
「　　　　　　　　　　」
　眠っているブロリーの額を撫でると、物音を立てぬように部屋から出て行く。
「あの時…無理にでもバーダックをこちらに呼ぶべきだったな」
　生誕祭が行われたあの日。
　宮廷占者であるカナッサ星人の言葉が気になり、バーダックに引越しの提案をした時。
　しつこく食い下がっていれば、バーダックも聞き入れたかも知れない。
　ともすれば、現状も違っていたのではないか。
　深い後悔の念が、パラガスの心には渦巻いていた。
　ブロリーの精神状態は日に日に悪化している。
　このままではブロリーの心が消滅するか、精神の暴走をきたすのにあと何年も掛からないだろう。

　パラガスにはこれ以上、時を待つ事は出来なかった。